黒鉛を知ろう
黒鉛の浮遊選鉱法について
今回は黒鉛の不純物を取り除く「浮遊選鉱」についてお話させていただきます。
浮遊選鉱とは
浮遊選鉱(flotation)とは『溶液に対する粒子の表面性質の差異によって鉱物を選択的に分離回収する方法』とされています1)。
具体的には、黒鉛を含む懸濁液に対して浮遊選鉱法を適用し、黒鉛粒子を選択的に浮上・回収することで不純物を除去し、純度を向上させる操作を指します。
この方法の導入により、母岩中に数パーセント程度しか含まれていない鱗片状黒鉛であっても、工業的に不純物を除去することが可能となりました。現在では、浮遊選鉱法は黒鉛精製における標準的かつ不可欠な技術として、世界各地で広く用いられています。
1)地学団体研究会 編 『新版 地学事典』 , 朝倉書店, 1996, p.1144



浮遊選鉱の身近な例
身近な例として「鉱物」の「表面性質の差異による分離」ではありませんが、「ペットボトルリサイクル」の「比重差による分離」があります。
リサイクル用に回収されたペットボトルは本体・ラベル・キャップをまとめて粉砕し、水に投入します。すると、比重の重い本体は沈み、比重の軽いラベルやキャップの破片は浮き上がります。
これによって本体とラベル・キャップを効率的・大量に選別しています。



浮遊選鉱の歴史
浮遊選鉱を行い不純物を除去する技術の発明時期は不明です。15世紀に炭酸銅の濃縮が浮遊選鉱で行われたとする記述はありますが、黒鉛に対する浮遊選鉱がいつ始まったかは確認できていません。
1878年に刊行された Engineering & Mining Journal は、黒鉛の用途と製造工程を概説する記事「Graphite and Its Uses」の中で、「旧式の浮遊工程(原文『old “floating” process』)」を紹介しています2)。
この旧式の装置について現物を見たことがありませんが、原鉱を水槽に入れ、黒鉛粒子を浮遊側として分離・回収する工程であった可能性が高いと考えられます。
2)Engineering & Mining Journal, Vol.26, No.25, 1878, p.441(Public Domain)

1892年、アメリカの鉱物学者である Thomas Egleston は、著書Catalogue of Mineralsにおいて黒鉛の同義語としてドイツ語で「泡状の鉄」(原文『eisenschaum』)と記載しています3)。黒鉛の外観は泡状ではないことから、泡沫を用いた浮遊選鉱中の黒鉛を指したものと推察されます(下図参照)。
3)Egleston, Thomas. A Catalogue of Minerals and Synonyms. New York: Wiley, 1892, p. 353.

現在の浮遊選鉱
浮遊選鉱は適切な条件設定を行うことで、様々な金属に適用可能といわれています。このため浮遊選鉱の技術は幅広い分野に採用されており、近年では海底鉱物資源・レアメタルなどにも採用が検討されているようです。
なお、黒鉛に対して浮遊選鉱を行う場合、黒鉛の種類によって難易度が大きく異なります。弊社では、これまでに蓄積したノウハウを基に、黒鉛の特性に応じた最適条件で浮遊選鉱を実施しています。
アイキャッチ画像
今回のアイキャッチ画像は浮遊選鉱中(テーブルテスト)の黒鉛です。