黒鉛を知ろう

黒鉛(グラファイト)と鉛の違いについて

今回は黒鉛と鉛の違いについてお話させていただきます。

見た目および結晶構造について -黒鉛の場合-

まずは黒鉛から説明します。今回は分かりやすく鱗片状黒鉛を参考にします。

下図の左は岐阜県飛騨市神岡町の鱗片状黒鉛の写真です。

下図の中央は拡大写真ですが六角板状の自形鉱物を見ることができます。黒鉛は炭素の塊として産出されます。

この六角板状の構造は黒鉛の結晶系(結晶構造の基本となる形)である六方晶系(下図右)をよく表しています。

見た目および結晶構造について -鉛の場合-

次に、鉛を含有する鉱石として有名な「方鉛鉱」について説明します。

下図の左は滋賀県甲賀市土山町の方鉛鉱の写真です。

下図の中央は拡大写真ですが、立方体の自形鉱物を見ることができます。黒鉛とは異なり、方鉛鉱は鉛と硫黄の化合物です。

この立方体の構造は方鉛鉱の結晶系である立方晶系(下図右)をよく表しています。

両者の違いを一覧にまとめました

次に黒鉛、鉛、および方鉛鉱を比較した表を以下に示します。ご覧のとおり両者には明確な違いがあります。

唯一黒鉛と鉛のラテン語が似ていますが、元素分析が一般的に普及していない時代の人々が「黒鉛を鉛と誤認」したことが要因と推定されます。

名称黒鉛方鉛鉱(鉛)
別名グラファイト
graphite
石墨
leadgalena
galenite
ラテン語plumbagoplumbumgalena
化学式CPbPbS
結晶系六方晶系面心立方晶立法晶系
自形結晶六角板状、鱗片状、
粉末状、塊状など
主に方鉛鉱として産出
単体での産出は稀
立方体、正八面体
黒色・灰黒色・鋼灰色など
劣化しない
青白い銀色
酸化劣化に伴い黒くなる
鉛灰色
酸化劣化に伴い黒くなる
光沢金属光沢~亜金属光沢
(土状黒鉛は鈍い光沢)
強い金属光沢をもつ
劣化に伴い光沢がなくなる
強い金属光沢をもつ
劣化に伴い光沢がなくなる
モース硬度11.52.5
比重2.2311.347.5~7.6
条痕鋼灰色~黒色
(油様の光沢)
やや青みを帯びた白色光輝鉛灰色
へき開(0001)1方向に完全へき開が弱く、不明{001}3方向に完全
展性なし(割れる)あり不明
用途摺動性、導電性、
熱伝導性、耐熱用途
鉛蓄電池、制震材、
放射線の遮蔽
鉛の原料

「Graphite」の語源はギリシャ語の「γράφω(graphein、書く又は描く)」に由来し、「plumbago(黒鉛)」とも呼ばれていました。

イタリア語では「grafio piombino(鉛製の筆記用具?)」と呼ばれていたようですが、現在この呼び方は廃止されているようです。

ドイツ語では、紙に跡を残す性質を持つことから「Reissblei(描画用の鉛?)」と呼ばれてたようです。

黒鉛の歴史は古いため、他にもいろいろな呼び方がされていたようなので、別コラムにまとめました。

アイキャッチ画像

今回のアイキャッチ画像は岐阜県飛騨市神岡町の鱗片状黒鉛です。

はっきりとした六角板状の黒鉛粒子を確認することができます。

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