黒鉛を知ろう
鱗状黒鉛(束状黒鉛)について
今回は束状黒鉛について説明いたします。
注意点
現代の産業分類において、天然黒鉛は (1)鱗状・塊状(vein・lump)、(2)鱗片状(flake)、(3)土状(amorphous) の3種類に分けられます。
「束状黒鉛」とは、スリランカで産出される塊状黒鉛の結晶が繊維状・束状に集合した晶癖を示すものであり、学術的な形態記述にとどまります。商取引や鉱業上の正式区分には含まれません。
束状黒鉛とは
束状黒鉛に関する文献は非常に少ないです。
市瀬(1952)は『束状黒鉛について』1)において、「これは極めて珍らしいもの」、「これは束状というべきもので,細かくほぐすと針状にもまた更に繊維状にもなる。」と記載しています。
1) 市瀬元吉,川崎政一:「束状黒鉛について」,『炭素』,第4巻,第3号,1952年.
鱗状黒鉛結晶の成長方向について
まず、鱗状黒鉛の結晶は母岩と鱗状黒鉛の境界付近においてマグマの貫入方向ではなく、母岩からみてほぼ垂直方向に成すことがあります。



図1-1 母岩付近の黒鉛結晶の成長方向(露頭写真)



図1-2 母岩付近の黒鉛結晶の成長方向(保管試料)
束状黒鉛の写真
束状黒鉛を図2、および図3に示します。
前述のとおり束状黒鉛はスリランカで産出される塊状黒鉛の結晶が繊維状・束状に集合した晶癖を示すものです。
母岩からほぼ垂直に成長している様子が確認できます。
はっきりとした金属光沢を放つことから、純度の高い黒鉛であると推測しています。
図2の「元は直線だった変形部」は輸送中に何かに接触したことで曲がってしまいました。通常の黒鉛はここまで軟らかい特徴は持っていません。
また、図2の「ささくれだった黒鉛」は接写画像です。黒鉛がささくれだったように剥離している様子が確認できます。このささくれ部分をピンセットで引っ張るとテープのように剥がすことができます。



図2 スリランカ黒鉛試料1



図3 スリランカ黒鉛試料2
アイキャッチ画像
今回のアイキャッチ画像はスリランカの束状黒鉛です。
まれにみられる晶癖のため、一般的な鱗状黒鉛は下記リンクをご覧ください。