黒鉛を知ろう

鱗状黒鉛(塊状黒鉛)について

今回は天然黒鉛の中から、鱗状黒鉛(塊状黒鉛)について説明させていただきます。

鱗状黒鉛は、平均2~3cmの塊状をなすランプ(lump)、 木切り屑のようなチップ(chip)、または粉状のダスト(dust)があります。黒鉛製品は一般的に粉状(dust)が該当します。

鱗状黒鉛(塊状)の産状

 鱗状黒鉛の英名である”Vein graphite”という名前は、黒鉛が厚みが数十cmになる黒鉛層が母岩の亀裂内に鉱脈状に分布して見られることに由来しています(veinは鉱脈を意味しており、母岩の割れ目に黒鉛が充填している状態を指します)。

 鱗状黒鉛の特徴として、母岩と非同時的(後生鉱床)であること、ほぼ垂直に近い急傾斜であること、そして諸説ありますが熱水由来の鉱物で充填されていること、などが挙げられます。

鱗状黒鉛の外観(目視)

鱗状黒鉛は別名「塊状黒鉛」とも呼ばれるとおり塊状に産出される黒鉛です。土状黒鉛も塊状で産出されますが、大きな違いはその純度です。原鉱石中の黒鉛濃度について鱗片状黒鉛は2~10%程度、土状黒鉛は70%以上、これに対して鱗状黒鉛は97%を超えます。

 なぜ鱗状黒鉛の黒鉛含有量が高濃度であるのかという疑問に対して明確な回答を述べることができません。これは、鱗状黒鉛は他の天然黒鉛と比較して産出場所が限られていますが、地質学的に最も説明が難しく起源に関して様々な理論が提唱されているからです。一説では「超臨界状態の岩漿から黒鉛が沈殿したから」といわれています。この一点だけでも鱗状黒鉛の特異性を感じる事ができるかと思います。「沈殿」というと実験室でビーカー等を用いた大きさを想像する方もいらっしゃるかもしれませんが、切出し後の原鉱石ですら人と比べることができる程の大きさとなります(下記写真)。この巨大な原鉱石は採掘現場でしか見ることができません。

採掘直後の巨大な鱗片状黒鉛原鉱石

 下記写真は様々な形を持つ鱗状黒鉛を示したものです。なお、極まれに「束状」の鱗状黒鉛が確認されています(束状黒鉛については後日、別コラムで紹介したいと考えています)。

鱗状黒鉛の外観(電子顕微鏡)

次の写真は、塊状黒鉛の電子顕微鏡画像です。

鱗状黒鉛の粒子は鱗片状黒鉛と比較して厚みがあるといわれています。

鱗状(塊状)黒鉛の別名

 鱗状黒鉛は、「塊状黒鉛、plumbago、スリランカ・グラファイト、セイロン・グラファイト」など、様々な名前で知られています。

 「セイロン・グラファイト」という名前は、産地であるスリランカ民主社会主義共和国の「セイロン島」から来ています。セイロンティーの産地として有名ですね。そして、スリランカが鱗状黒鉛を商業規模で生産する唯一の地域であるため、地名がそのまま商品名となっています。

 スリランカの場所・他の天然黒鉛の産出場所については下記リンク先をご参照ください。

歴史

 スリランカの黒鉛がヨーロッパの記録に出現したのは1675年、あるオランダ総督が後任者への書簡に、丘陵部や沿岸の複数地域において「potloot(鉛筆)」と称される鉱脈があることを述べています。ただし、当初は水銀の生成物として認識されていたようです。その発見は非常に重要とされ、近郊の鉱山には軍事警備が敷かれたと伝えられています。

 スリランカの黒鉛が欧米圏へ最初に出荷されたのは1820年代といわれています。スリランカ産の黒鉛は鱗状黒鉛が採掘時点で既に純度97%を超えているため、他国産の黒鉛よりも灰分が少なく品質に優れ、採掘・洗浄・輸送にかかる労働コストも抑制できたといわれています。その結果、当時のスリランカ産の黒鉛は市場で圧倒的な優位性を有していたようです。

アイキャッチ画像 

 今回のアイキャッチ画像は、スリランカのボガラ鉱山の鱗状黒鉛です。現在は画像のような塊状で輸入することは困難となっています。

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