黒鉛を知ろう

鱗片状黒鉛について

今回は天然黒鉛の中から、鱗片状黒鉛について説明させていただきます。

鱗片状黒鉛の自形結晶(光学顕微鏡)

鱗片状黒鉛(英名:Flake Graphite)はその名が示す通り「薄片状(Flake)、魚の鱗状、または板状」の結晶を持っています。

黒鉛は六方晶系に分類されており、発達した鱗片状黒鉛はこの六方晶系を肉眼で確認することができます。

例えば写真左は六方晶系の基底面(002面、正六角形の面)を確認することができます。

また、写真中央は正六角形が少しずつズレながら発達した珍しい自形結晶です(成因は分かりませんが、黒鉛結晶はラセン状に成長するといわれています1)。この自形結晶は、ラセン状に成長した影響かもしれません)。

1)黒鉛結晶のラセン的成長について 都竹卓郎 炭素,5 (17) 2~7 (1955)

鱗片状黒鉛の外観(走査型電子顕微鏡)

上記の六角形の結晶は稀に見られる自結晶の形状です。

実際の黒鉛粉末の形状は以下に示す走査型電子顕微鏡写真のとおり、「六角板状」というよりは「薄片状、魚の鱗状、板状」という表現が近いといえます。

また、粉砕に伴って粒径が小さくなっても形状(薄片状、魚の鱗状、板状)が変化にくいことも鱗片状黒鉛の特徴といえます。

鱗片状黒鉛の炭素成分と形成過程について

 鱗片状黒鉛は中国、マダガスカル、ブラジル、カナダ、インド、モザンビーク、ウクライナ、ノルウェー、ロシアなど様々な地域で商業的に産出しています。また、純度・産出量を考慮しなければ、より多くの場所で確認することができます。

 そのため、鱗片状黒鉛の「由来となる炭素」や「黒鉛への形成過程」は専門家により意見が分かれていますが、以下の3パターンが挙げられています。

その1.古代の微生物が沈殿、レンズ状・層状に堆積した後、広域変成作用により黒鉛を生じた(下記の写真は水底へ沈降・堆積する有機物です)。また、四国地方の付加体に含まれる炭素が変成作用により黒鉛を生じることもあるそうです。

その2.石灰岩中のCaCO3が火成岩の接触によって分解してCO2が放出され、さらに還元作用によって黒鉛が生じた。

その3.岩石が地殻変動(熱、圧力)を受けて片麻岩、結晶片岩のような変成岩を形成するときに、岩漿(マグマ)から揮発成分(CO,CO2)が岩石中に浸透し、還元されて黒鉛が生じた。

黒鉛の産状と精錬について

下図は鱗片状黒鉛の原鉱石の拡大写真です。拡大写真の茶色~黄銅色の部分が風化した母岩、金属光沢をもつ黒い部分が黒鉛粒子です。

鱗片状黒鉛は母岩中にゴマ粒状に点在しています。

ゴマ粒状に点在する黒鉛を製品化するために、精錬工程(純度向上の作業)を行います。具体的には、採掘された原鉱石は粗粉砕した後、黒鉛懸濁液を作り浮遊選鉱法によって黒鉛を浮遊・回収することで純度向上を行います。

黒鉛は常圧下では溶融せず、昇華します(昇華点は3650±25 K)。この性質から、天然黒鉛は鉄鉱石のように溶融して大きな粒子に成形することができません。

したがって、天然黒鉛の粒子径は採取時に最大となり、採掘・浮遊選鉱・製品化の過程で次第に小さくなります。

このため、「鱗片状黒鉛の大きさは原鉱石の粒子の大きさに依存する」という特徴があり、「大きな黒鉛粒子は需要が高くなりやすい」とされています。

アイキャッチ画像

今回のアイキャッチ画像は、中国黒竜江省の鱗片状黒鉛です。母岩がほどよく風化しています。

大変喜ばれています!

無料サンプル申込・お問い合わせ

初回は5種類、合計1まで無料にてサンプルをご提供しております。
研究や開発にお役立てください。

サンプル
黒鉛